男性ホルモンが減少するとどうなるか|働く男性の体調変化との関係

はじめに

「男性ホルモンが低下すると不調が出る」といった話を、テレビやインターネットで見かけたことがある方も多いと思います。

一方で、男性ホルモンが実際に体のどのような働きに関わっているのか、また年齢とともにどのように変化していくのかについては、断片的な情報だけが広がっている場面も少なくありません。

この記事では、男性ホルモン——特にテストステロン——が、筋肉量・気力・睡眠・性欲などとどのように関わっているのかを整理します。

ただし、「男性ホルモンが低下したから不調が起きている」と断定するための記事ではありません。

働く男性の体調変化には、睡眠、ストレス、生活習慣、加齢、仕事環境、持病など、さまざまな要素が関わります。

男性ホルモンは、その背景を整理するための一つの視点として理解することが大切です。


男性ホルモンとは何か

男性ホルモンとは、男性の体内で主に精巣から分泌されるホルモンの総称です。

その中でも代表的なのが「テストステロン」です。

テストステロンは、思春期の身体的な発達に関わるだけではなく、成人以降も筋肉量、骨格、気力、性欲、睡眠など、体のさまざまな働きに関わっていることが知られています。

なお、テストステロンは男性だけに存在するホルモンではありません。女性の体内でも分泌されていますが、一般的には男性の方が分泌量が多いとされています。


テストステロンは体のどのような働きに関係するのか

テストステロンは、筋肉量、体型、気力、集中力、気分、性欲、睡眠など、心身のさまざまな働きと関わっています。

ただし、これらはテストステロンだけで決まるものではありません。

睡眠不足、運動不足、栄養状態、慢性的なストレス、加齢、仕事環境、持病など、複数の要素が重なって体調変化につながります。

ここでは、男性ホルモンと関係があると考えられている主な領域を整理します。

筋肉量・体型

テストステロンは、筋肉量の維持に関わるホルモンの一つです。

年齢とともに「筋肉が落ちやすくなった」「体型が変わりやすくなった」と感じる男性もいますが、その背景には運動量や食事内容の変化、加齢そのものなど、さまざまな要因があります。

加齢に伴って筋肉量が低下していく「サルコペニア」と呼ばれる状態では、男性ホルモンの変化が一つの背景として挙げられることがあります。

ただし、筋肉量や体型の変化を、男性ホルモンだけで説明することはできません。

気力・集中力

テストステロンは、気力や集中力にも関わると考えられています。

「以前よりやる気が続かない」「集中力が落ちた気がする」と感じる背景に、男性ホルモンの変化が関係している場合もあります。

一方で、働く世代の男性では、睡眠不足や仕事上の負荷、慢性的な疲労、ストレスなどによっても、同じような変化が起こります。

そのため、男性ホルモンだけに原因を絞るのではなく、生活全体の状態とあわせて整理することが大切です。

気分

テストステロンは、気分や意欲とも関係があるとされています。

男性ホルモンの変化によって、以前より気分が落ち込みやすくなったり、感情の波を強く感じたりする場合があります。

ただし、気分の変化には、睡眠の質、人間関係、仕事環境、ストレス、心身の疲労なども深く関わります。

そのため、「気分が落ちている=男性ホルモンの低下」と単純に考えるのではなく、複数の要因が重なっていないかを整理する視点が重要です。

性欲・勃起機能

テストステロンは、性欲にも関わるホルモンです。

年齢とともに、以前との違いを感じる男性は少なくありません。その背景の一つとして、男性ホルモンの変化が関係することがあります。

また、勃起機能にも男性ホルモンが関わる場合があります。

ただし、勃起機能の変化には、血管や神経の状態、睡眠不足、ストレス、生活習慣、持病、服薬状況など、多くの要素が関係します。

そのため、性欲や勃起機能の変化についても、男性ホルモンだけで判断するのではなく、全体の体調変化の一部として考えることが大切です。

睡眠・疲労感との関係

テストステロンは、睡眠とも深く関わっています。

テストステロンは睡眠中に分泌されるため、睡眠時間の不足や睡眠の質の低下が続くと、男性ホルモンの状態にも影響することがあります。

反対に、男性ホルモンの変化が、疲労感や睡眠の質に関係していると考えられる場面もあります。

つまり、睡眠とテストステロンは、一方通行ではなく互いに影響し合う関係として整理されています。

「寝ても疲れが抜けない」「以前より回復しづらい」と感じる場合も、男性ホルモンだけではなく、睡眠習慣、ストレス、飲酒、運動不足などを含めて考える必要があります。


男性ホルモンは年齢とともに変化するのか

テストステロンの値は、若い頃をピークに、年齢とともに緩やかに変化していく傾向があります。

ただし、その変化の程度には個人差があります。

同じ40代・50代でも、大きな変化を感じる人もいれば、あまり変化を感じない人もいます。

また、睡眠、ストレス、体重、運動量、生活習慣なども、男性ホルモンの状態に影響すると考えられています。

日本泌尿器科学会の「LOH症候群診療の手引き」でも、テストステロン値は個人差や測定条件を踏まえて評価する必要があるとされています。

そのため、「年齢を重ねたから男性ホルモンが大きく低下している」と単純に考えるのではなく、年齢とともに変化しやすい要素の一つとして理解することが現実的です。


男性ホルモンが低下すると、どのような変化が起こる可能性があるか

男性ホルモンの変化と関連して、次のような体調変化が見られることがあります。

  • 疲れやすさ・倦怠感
  • 気力や意欲の低下
  • 集中力の変化
  • 気分の落ち込み
  • 感情の波
  • 筋肉量や体型の変化
  • 性欲の変化
  • 睡眠の質の変化

ただし、これらは男性ホルモンだけで起こるものではありません。

たとえば、睡眠不足、慢性的なストレス、運動不足、食生活の乱れ、体重変化、うつ状態、甲状腺機能の異常、貧血などでも、似たような不調が見られることがあります。

そのため、「当てはまる項目がある=男性ホルモンが低下している」と判断することはできません。

男性ホルモンは、体調変化を整理するための一つの視点として考えることが大切です。


ただし、不調の原因を男性ホルモンだけに決めつけない

インターネット上では、「テストステロンを上げれば元気になる」といった情報を見かけることがあります。

しかし、働く男性の不調はそれほど単純ではありません。

疲れやすさ、気力低下、集中力の変化、気分の落ち込みなどは、睡眠、ストレス、仕事上の負荷、生活習慣、他の病気など、さまざまな要因が重なって起こることがあります。

男性ホルモンの変化は、その背景の一つとして考えられる要素です。

一方で、「すべての不調の原因」として扱うのは現実的ではありません。

体調を見直す際は、男性ホルモンだけに注目するのではなく、睡眠、食事、運動、ストレス、仕事環境、人間ドックや血液検査の結果なども含めて整理することが重要です。


男性更年期・LOH症候群との関係

「男性更年期」や「LOH症候群」は、男性ホルモンの低下と関連して、疲労感、気力低下、気分の変化、性欲や勃起機能の変化などが見られることがある状態です。

ただし、症状だけで判断できるものではありません。

日本泌尿器科学会の手引きでは、自覚症状に加えて、血液検査によるテストステロン値の確認などを含めて評価するとされています。

また、似たような不調は、うつ病、甲状腺機能異常、睡眠時無呼吸症候群、貧血などでも起こることがあります。

そのため、男性ホルモンだけで説明できるとは限らず、他の疾患との切り分けも重要になります。

厚生労働省の調査でも、40〜50代の男性が、更年期に関連するような症状を経験していることが示されています。

ただし、その背景には睡眠、ストレス、生活習慣、加齢など複数の要素が関係するため、ホルモン変化だけで整理できるわけではありません。

男性更年期・LOH症候群は、不調の背景として考えられる可能性の一つです。

気になる症状が続く場合は、自己判断だけで決めつけず、かかりつけ医または専門医への相談を検討してください。


医療機関で確認されることがある内容

男性ホルモンや男性更年期について医療機関で相談する場合、次のような内容が確認されることがあります。

ここでは、「診断の流れ」を示すのではなく、一般的に確認されることがある項目を整理します。

問診

まず、どのような症状があるのか、いつ頃から変化を感じているのかなどが確認されることがあります。

あわせて、睡眠、食事、運動、飲酒、ストレス、仕事環境、気分の変化などについて聞かれる場合もあります。

これは、男性ホルモンだけではなく、生活全体や心身の状態を含めて整理するためです。

血液検査

テストステロン値は、血液検査で確認されます。

一般的な人間ドックには含まれていないことも多く、必要に応じて追加で確認される場合があります。

テストステロン値の解釈

テストステロン値は、時間帯や体調、検査方法などによって変動することがあります。

そのため、一度の測定結果だけで判断するのではなく、複数回の測定や他の検査項目とあわせて総合的に評価されることがあります。

他の疾患との鑑別

疲れやすさ、気力低下、集中力の変化、気分の落ち込みなどは、男性ホルモン以外の原因でも起こります。

たとえば、うつ病、甲状腺機能異常、睡眠時無呼吸症候群、貧血などでも似たような症状が見られます。

そのため、医療機関では、テストステロン値だけでなく、他の疾患の可能性も含めて確認されることがあります。


自分で整理しておきたいポイント

医療機関への相談を考える際は、次のような点を整理しておくと、自分の状態を把握しやすくなります。

  • いつ頃から、どのような変化を感じているか
  • 睡眠・運動・食事・飲酒量に変化があるか
  • 仕事や生活環境に強いストレスがないか
  • 気力・集中力・気分の変化があるか
  • 体重や体型の変化があるか
  • 人間ドックや血液検査で指摘された内容はあるか

これらを整理しておくことで、体調変化を客観的に振り返りやすくなります。

また、医療機関で相談する際にも、状況を伝えやすくなります。


まとめ

テストステロンをはじめとする男性ホルモンは、筋肉量、気力、集中力、気分、睡眠など、体のさまざまな働きに関わっています。

年齢とともに緩やかに変化していくことが知られていますが、その程度には個人差があります。

また、疲れやすさや気力低下などの不調は、男性ホルモンだけで起こるものではありません。

睡眠、ストレス、生活習慣、仕事環境、他の疾患など、複数の要因が重なっていることも多くあります。

そのため、「男性ホルモン=すべての原因」と考えるのではなく、体調変化を整理するための一つの視点として理解することが大切です。

気になる症状が続く場合は、自己判断だけで決めつけず、かかりつけ医または専門医への相談をご検討ください。


あわせて読みたい記事

男性ホルモンの変化と関連して語られるものに、「男性更年期」や「LOH症候群」があります。

男性更年期・LOH症候群の基本について知りたい方は、
「男性更年期・LOH症候群とは|働く男性が知っておきたい基本」もご覧ください。


参考情報

本記事では、以下の情報を参考にしています。

  • 厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」
  • 日本泌尿器科学会「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症)診療の手引き」
  • 日本メンズヘルス医学会「LOH症候群・男性更年期とは」
  • 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「身体活動・運動」

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